銀河図書館から見る鷺沢文香の世界観 第3章

本記事は,2020年2月22日に開催されたアイマス学会 in 札幌で私が発表した内容を,当日のプレゼン資料とともにまとめたものです。

第0章 https://koh-2323.hatenablog.com/entry/2020/02/26/232929

第1章 https://koh-2323.hatenablog.com/entry/2020/02/27/220627

第2章 https://koh-2323.hatenablog.com/entry/2020/02/29/145722

また,本記事は楽曲「銀河図書館」のネタバレを含みますのでご注意ください。

 

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前回まで歌詞の解説を行ってきましたが,今回はその歌詞の内容が文香さん自身の物語とどう対応するのか,また,よくわからないまま保留にしていた『一人の人』は結局何者だったのかを考えていこうと思います。今回が最終回になります。

 

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まず登場人物の『女の子』と文香さんの関係について改めて見ていきます。

この二人にははっきりした共通点があります。『女の子』は『本の世界』から『知らない星』へ,文香さんは読書だけの生活からアイドルへなり,どちらも自身を取り巻く環境が激変していることです。

『女の子』は文香さんが読んだ(書いた?)物語に登場する架空の存在ではありますが,彼女が文香さんを暗示することは確かだといえるでしょう。

 

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ではその激変した環境,世界について整理していきます。

まず『女の子』がもともといた『本の世界』は,誰もいない空間で,本を黙って一人で読む世界でした。これはアイドルになる以前の文香さんの様子を示していると考えられます。

その後『女の子』が『知らない星』に落とされると,本を声に出して読むようになり,それを聞いてくれる人が現れました。これはアイドルになった後の文香さんを示していると言えるでしょう。

こうした変化を少しメタ的な視点からまとめ直してみると,以下の二点に集約されると思います。すなわち,
・インプットだけの環境からアウトプットができる環境への変化
・他者が存在しない環境から他者が存在する環境への変化
です。

 

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ここまで整理した上で,よくわからないままだった『一人の人』について考えてみようと思います。

『女の子』が『知らない星』に落ちてすぐ,『一人の人』は本を渡しながら君の物語を聞かせてと『女の子』に言い,『女の子』はそれに応じて本を読み始めました。

これまでの内容を踏まえると,『女の子』が文香さんであることはまあいいでしょう。

次に『一人の人』の「君の物語を聞かせて」という発言ですが,これは『女の子』にアウトプットを促す行動であると捉えられます。『女の子』はそれに応じて「本を読む」というアウトプットを始めたわけです。

つまり,ここでの『一人の人』は『女の子』にアウトプットを促す役目を担っています(もしくは,アウトプットを促すことを目的として動いています)。

これを現実世界に当てはめるとどうでしょうか。最も単純な考え方は,『一人の人』はプロデューサーで,「君の物語を聞かせて」という発言はアイドルへのスカウトであるというものです。『女の子』すなわち文香さんは,Pのスカウトに応じて,アイドル活動というアウトプット的行動をするようになったということです。

この解釈は間違いなく正しいでしょう。そして,文香Pたる私たちにとって,この解釈はとても都合がいいです。なんといっても文香Pは文香さんのことが好きなので,作中の重要人物である『一人の人』になりたがる願望がどうしてもあります。

しかし,まだ解釈の余地は残ります。というのも,『一人の人』の役目がアウトプットを促すことであると考えると,それをできる人はP以外にもいるからです。

 

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例えばファンがそうです。ファンは文香さんに歌ってほしいですよね。文香さんはこれに応じて歌を歌うわけです。

また,アイドル仲間もそうです。仲間の皆さんは文香さんが博識なのを認知しているので,相談を持ち掛けることが多いです。スライドに例を挙げましたが,ギリシャに行くので見どころを教えてほしいという新田美波さん,手紙の文面の相談に乗ってほしいという瀬名詩織さん,オススメの本を教えてほしいと言ってタグまで作っちゃう橘ありすちゃん,いつもお世話になっております。文香さんはこれに応じて相談に乗ってあげます。

こういった人たちのように,文香さんに関わりを持ち,働きかけをする人ならだれでも『一人の人』になりうるということです。 

先ほど,文香Pは文香さんが好きだから『一人の人』をPだと解釈したくなると書きました。しかし,実際文香さんが好きなのはPだけではなく,いっぱいいます。だからこそ,『一人の人』の暗示する対象を誰か一人の人物に特定せず,これは誰でもなれる存在であると捉えた方が,みんな一緒に幸せになれると思います。

 

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では物語の最終盤の解釈へ行きます。

まず『一人の人』の「素敵な物語をありがとう。君をずっとずっと待っていたんだ!」という発言です。『女の子』のことを称賛しています。しかも『一人の人』にとって『女の子』は,ずっと待ちわびていた存在,必要としていた存在であるらしいです。

『女の子』から見ると,これはいわゆる他者からの承認にあたります。

これに対して『女の子』は顔を真っ赤にしながら笑います。これは一言で言えば恋なのですが,もう少し噛み砕くと,ここで『女の子』は他者からの承認を受ける経験をしていると言えます。しかも『女の子』はこれまで誰もいない『本の世界』にいたので,他者承認を受ける経験は初めてだったではないかと考えられます。

皆さん承認欲求はお持ちでしょうか。あれは満たされると気持ちいいですよね。『女の子』はここですごくいい気分になっているわけです。

これを現実世界に当てはめてみます。こちらにも,Pやファンや仲間たちなど,文香さんを必要としていて,文香さんのいいところを認めてくれる人たちがたくさんいます。それに対して文香さんはとても喜んでいるのです。

 

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この構図,とてもアイドルっぽくないですか?

 

ということで,文香さんはアイドルになったことでアウトプットの機会と他者との関わりを得るようになり,結果として他者から必要とされ認められる喜びを知った,というのが,この描写の表現しているところなのではないでしょうか。

 

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余談ですが,承認欲求が満たされる喜びに味を占めた文香さんは,今めちゃくちゃ喋るようになっています。スライドに載せたのは,しりとりで二宮飛鳥くんが飛ばしてくる難しい単語に対し,しりとりそっちのけで解説をしていく文香さんの図です。ちなみにこの後ジェットコースターに乗った時はもっとすごい勢いでしゃべり始めたのですが,かわいそうなので載せません。

文香さんはこれまでインプット偏重の生活送っていたので,アウトプットが楽しいとは言ってもそのやり方がよくわかっていない節があります。誤解を恐れずに言えば,喋るタイプのコミュ障になっています。実際しりとりでなりふり構わず単語の解説をし始める人がいたらどうですか。ちょっと引きますよね。しかし,それをやっている人物が他でもない鷺沢文香であり,人生をかけて積み上げられた知識量に裏付けられているからこそ,本来ちょっと引くようなコミュ障的言動ですら尊くなってしまうのです。ズルいですね。ズルです。

 

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話が逸れすぎました。これまでのまとめに移ります。

「銀河図書館」から見えてきたように,文香さんの世界はアイドルになったことで大きく変わりました。しかし,今は何かをアウトプットすることが楽しく,自分を認めてくれる他者の存在がうれしいということが見て取れます。「銀河図書館」の世界には,そうした文香さんの喜びや感謝の感情が表れているのだと思っています。

 

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謝辞です。学会ということなので入れましたが,謝辞なんてやっている発表者は私以外いませんでした。ここに載せた皆さんは,半年前に私を密室に監禁し,徹夜で囲い込み,オタク漬けにしてきた皆さんです。皆さんがいなかったら私はこんなことやってないです。ありがとうございました。

 

 また,今回「学会」という企画名を意識したあまり,淡々と「銀河図書館」の説明をするだけで終わってしまいました。これは今回の発表の反省点のひとつです。というのも,文香Pたる私にはもっと主張しなければならない案件があるからです。

それすなわち総選挙です。

鷺沢文香はここ数年総選挙上位の常連になりつつありますが,シンデレラガールの座にはあと一歩及んでいません。しかし,今年の総選挙は様々な要因が重なって文香さんに追い風が吹いています。

この記事を読んでいただいた方で,少しでも鷺沢文香を良いなと思っていただいた方は,ぜひ彼女への投票をよろしくお願いいたします。

 

ここまで読んでいただき,ありがとうございました。