『キセキの証』歌詞解釈

こんにちは。
この記事では、去年の総選挙で鷺沢文香がシンデレラガールに輝いた際に頂いた楽曲『キセキの証』の歌詞について書きます。

次の総選挙が始まるか次の文香イベが来るまでにキセキの証の歌詞解釈やっときたいなと思ってたのですが、どっちも来ました。今焦ってこの文章を書いています。
時間的余裕の無い中で書いたものなのでガバが多いと思いますが、よろしくお願いします。



注意

・個人の解釈であることをご了承ください。他の考察記事も参考にしたかったのですが見当たらなかったので完全に個人の解釈です。
・異論は大いに歓迎します。ご意見等あればコメントなどいただけますと幸いです。
・他の歌唱メンバー視点からの解釈やパート分けに基づく考察も気になるところですが、私には考えるの無理でした。ぜひご意見ください。




以下常体



楽曲「キセキの証」について

https://columbia.jp/prod-info/COCC-17962/

第10回シンデレラガール総選挙の上位5人(鷺沢文香一ノ瀬志希神谷奈緒高森藍子佐久間まゆ)による楽曲。1位のアイドルである鷺沢文香に特に寄せた曲調と内容になっている。とはいえ、あくまで歌唱メンバーはこの5人ということもあり、鷺沢文香の純粋なソロ曲であるBright Blueや銀河図書館と比べると、「鷺沢文香が歌ってる前提じゃないと意味が分からない」みたいな表現は少ない。歌詞は誰が歌っても不自然のないものになっているし、文面通りに読んでも(比較的)理解しやすい。
ではそんなキセキの証の鷺沢文香ポイントはどこなのか、鷺沢文香がこの曲を歌うことの意味は何なのか、というのを考えていくのがこの記事のひとつの目標になる。



歌詞解説

いつからか憧れた場面
頁めくり 思い出してる
「きっと叶う」そう信じさせてくれた
そばに居てくれる あなたへ

イントロ。本好きの鷺沢文香らしく本や物語になぞらえた表現がなされ、冒頭かららしさが強く出ている。なお「ページ」を「頁」と漢字表記するのは鷺沢文香のセリフにも見られる表現。
ここでは憧れた場面を思い出す『私』とそばにいる『あなた』が、この曲の登場人物として描写されている。しかし、『憧れた場面』が一体どんなものか、『あなたへ』何を伝えようとしているかまでは示されていない。これらについてはラスサビで回収していく構造になっている。
ここでの『あなた』は、『私』=鷺沢文香のそばに居る特定の1人の人物ということで、Pと捉えて問題ないだろう。そりゃそうだろと思いたくなるが、曲中の二人称をPに限定しない方がしっくり来る場合もあり、以前銀河図書館の歌詞解釈をした時もそうだった(注1)。今回の曲はコンセプト的にもさすがに『あなた』=Pであってほしい。




等しくある可能性でさえ 閉ざしていた頃の私
まっすぐ見てるあなたの瞳に 見つけた夢

1番Aメロ。鷺沢文香がアイドルになる前の様子とリンクしてくる。

モバマスぷちエピソード4(ステップアップエピソード1)より

等しくあるはずの可能性を閉ざし、自分はこういう生き方しかできないと決めつけていたのがアイドルになる前の『私』。しかし『あなた』が現れて『私』の可能性を見出してくれた。
鷺沢文香にとってこの出来事が最大の転機であったことは間違いない。




行き先の見えない長い夜も 諦めないあなたを見て
変わりたいと踏み出した私 覚えていますか?

1番Bメロ。おそらくここは「アイドルになった時」ではなく「アイドルになってから先」の話(注2)。
アイドルになりたての鷺沢文香はレッスンの段階で大いに苦労している。体力も技術もコミュ力も自信も自己肯定感も何もなかった頃なので、それはもう大変だ。特にモバの方は結構卑屈になっている(デレステはまだマシ)。これは鷺沢文香にとっては『行き先の見えない長い夜』だったかもしれない。

モバマスぷちエピソード2(Voレッスンエピソード1)より 卑屈沢文香さん

しかしPはそんな有様の鷺沢文香に愛想を尽かさなかった。すごいアイドルになると信じて疑わなかった。これが『諦めないあなた』ということだと思う。

ところで、『変わりたいと踏み出した』に関連してBright Blueの冒頭に以下のような歌詞がある。

飛ばしたページを読み返す様に
心と向き合えば
少しは自分を変えられる
一歩を踏み出せそうで

以前Bright Blueの歌詞解釈の記事に書いたのだが(注3)、この部分は「本を読むだけで終わってしまった思春期~青春期のやり直し」を表していると考えている。しかし、その過程はもちろんいい事ばかりだけでなく苦痛を伴うものだったはずで、辛いと分かっていたからこそ今まで目を逸らし続きてきてしまったのだろう。それでも前に踏み出すための勇気ときっかけを得るためには、Pの存在と熱量が必要だったのだと思う。
キセキの証で『諦めないあなたを見て変わりたいと踏み出した』と言っているのは、Bright Blueで『一歩を踏み出』そうとした時のきっかけとなったPの散在について、補完する形で説明しているのかもしれない。




今、此処に立っている私 記される新たな軌跡
辿るたび 高鳴る心の音
満ちる喜び 噛み締めて

1番サビ。
曲名の『キセキ』の表す2つのうちの1つである『軌跡』が登場する。ここまで、Aメロではアイドルになる瞬間、Bメロではアイドルなってすぐの頃が描写されてきたが、さらにアイドルとして成長した『今、此処に立っている私』、そして次なる未来へ向けて『記される新たな軌跡』と時系列順に続くことで、始まりからこの先へと続く『軌跡』とそれを辿る『私』が表現されている。
その『軌跡』は辿るたび心の音が高鳴り、喜びが満ちるものであるらしい。アイドルになってよかったという心境、アイドルとして活動し前へ進む喜びが読み取れる。
もう一つの重要フレーズが『今、此処に立っている私』で、これは曲中で3回登場する。素直に解釈して、今アイドルとして輝いている鷺沢文香のことを指していると言える。ただし、3回ともその文脈におけるニュアンスというか意味するものが違っているように見える。1番サビでのニュアンスをまとめるなら、「アイドルとしての軌跡を、喜びを噛み締めながら辿る『私』」という感じか。




まだどこかで他人事みたいに感じていた頃と違う
まっすぐ届くあなたの想いに 応えたくて

思うように上手くいかない時も 立ち止まらずいられたのは
大丈夫だと微笑むあなたを 思い出したから

2番Aメロ、Bメロ。
1番のAメロ、Bメロと同じようなことを言っているが、その質が異なる。まず1番は『まっすぐ見てるあなたの瞳にㅤ見つけた夢』『変わりたいと踏み出した私』など、『あなた』を見て変わろうとした『私』の動きが描写されている。一方2番では『まっすぐ届くあなたの想いに 応えたくて』『大丈夫だと微笑むあなた』など、どちらかというと『あなた』が『私』を後押しする動きに焦点が当たっている。説明が前後するが、2番サビの『背中押す』も『あなた』の行動である。
つまり、1番では『私』→『あなた』、2番では『あなた』→『私』と、働きかけの方向が逆になっている。
これを踏まえて2番サビを見ていきたい。




今、此処に立っている私 背中押す 生まれる奇跡
触れるたび 深まる心の音
気付く 愛しさ抱きしめて

2番サビ。『キセキ』の2つ目となる『奇跡』が登場する。
『あなた』を見て変わろうとした『私』(1番)だけでなく、その背中を押す『あなた』(2番)がいてくれて、互いが互いに想い合った結果『奇跡』が生まれると言っている。1番と同じ『今、此処に立っている私』というフレーズがあるが、2番でのニュアンスは「『あなた』の後押しによってアイドルとして奇跡的な輝きを放つ『私』」という感じになると思う。
そして綴られる『私』の胸の内は、『触れるたび 深まる心の音 気付く 愛しさ抱きしめて』と表現されている。もう『私』の想いはただならぬ所まで来てしまっているのは疑いようがない。

余談だが、鷺沢文香がPラブ勢かどうかについては度々話題に上がる。個人の意見として、去年のアニバアイプロの様子を見る限り、鷺沢文香は「ガチ」である。あんな愛の囁きを浴びせてきてその感情を認めないというのは、なろう系鈍感主人公でも無理だ。

アニバアイプロより Pの心臓がもたない


あなたがいれば受け容れられた どんな涙も笑顔も
伝えきれない言葉の代わりに贈ろう

Cメロ。一番語りたかった部分。
『涙』『笑顔』といった単語はBright Blueにも登場している。

どこまでも続くシナリオの中
どれだけの涙 笑顔に出来る?
やっと見付けた光

鷺沢文香がアイドルになって、これからどれだけの涙を笑顔に出来るだろうと希望を感じていたのがBright Blue。それに対し、実際に涙を笑顔に変えてきた後が語られるのがキセキの証。こういう対比はオタクの大好物である。
そして『あなたがいれば受け容れられた』というのもポイント。『涙』も『笑顔』も強い感情で、現実の『涙』『笑顔』は、元々想像していたものとは違っていたかもしれない。それもこれまで人との関わりが乏しかった鷺沢文香だから、尚更受け止めるだけでも負荷はかかったかもしれない。その負荷を『あなた』は支えてくれた。『私』も『あなた』も一緒に頑張ってここへ至った過程が頭に浮かんできて、涙が出てくる。

なお、ここで引用したBright Blueの歌詞はちょっと解釈しづらい要素があるので、詳しくは私の過去の記事を参照していただきたい(注3)。

そして最後に『伝えきれない言葉の代わりに贈ろう』と宣言し、ラスサビへと進む。




今、此処に立っている私
どんな風に見えていますか?

先程、イントロで具体的な内容をぼかしたままの表現がラスサビで回収されると説明した。そのうちのひとつである『いつからか憧れた場面』についてだが、これがまさしく『今、此処に立っている私』だと言える。ついに3回目の登場となるこのフレーズだが、ここでのニュアンスは「いつからか憧れた場面をその身で体現する『私』」ということになる。
ただし、本の中の場面に憧れる読者だった過去の『私』とは違い、今の『私』はその場面の当事者である。視点が変わってしまっていて、自分で自分の『憧れた場面』を見ることはできない。だからこそ、そばにいる『あなた』に問うのだ。『どんな風に見えていますか?』と。『今、此処に立っている私』は、『キセキの証』足り得ていますかと。

そしてもうひとつ、『そばに居てくれる あなたへ』伝えたかったことは何か。これはラスサビの最後にとても直接的な言葉で綴られている。




この先も そばで見ていてほしい
ずっと特別な あなたと
一緒に歩む 愛の証

それはもう、当たり前じゃないか。
こうして『私』と『あなた』は結ばれたとさ……圧倒的ハッピーエンド……めでたし……めでたし……。




以下敬体



終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。大変な長文になってしまい申し訳ありません。しかも読み返すと非常に気持ち悪い文章になっていて恥ずかしいです。やはり愛とか恋とか好意とかは人をキモくしますね。

冒頭で述べた通り、近日中にデレステにて新ユニットによる新曲を引っさげて文香イベが始まります。一つの区切りへ至った文香さんがその先でどんな姿を見せてくれるのか、期待しかありません。
それでは。



脚注

(1)大昔に書いた銀河図書館の歌詞考察記事 
銀河図書館から見る鷺沢文香の世界観 第0章 - 文香さんの書斎の床下

(2)個人的な話だが、最初この部分もアイドルになった時の話かと思って勘違いが起こっていた。鷺沢文香が最初の一歩を踏み出した(アイドルになった)のは、先述の通り『あなた』=Pの登場をきっかけに、よく分からないまま連れだされたからだった。ところが、この歌詞だと困難に見舞われても諦めない『あなた』に感化されてアイドルになった、という風にも読めてしまう。しかしPが鷺沢文香をスカウトしたタイミングでそんな困難に立ち向かったり諦めないガッツを見せたりしたかというと思い当たるものが無い。いや本当はそうだったのかもしれないが…Pに関する描写が少なすぎる。
…という感じだったので、この歌詞を読むとなんか『覚えていますか?』と問われているのに覚えていなくてつらかった。
ということで視点を変え、この部分をアイドルになってからの話ととらえるとだいぶしっくり来たので、今はこの解釈で納得している。

(3)ちょっと前に書いたBright Blueの歌詞考察記事 
改めてBright Blueの歌詞を考える - 文香さんの書斎の床下