銀河図書館から見る鷺沢文香の世界観 第1章

本記事は,2020年2月22日に開催されたアイマス学会 in 札幌で私が発表した内容を,当日のプレゼン資料とともにまとめたものです。

第0章 https://koh-2323.hatenablog.com/entry/2020/02/26/232929 

また,本記事は楽曲「銀河図書館」のネタバレを含みますのでご注意ください。

 

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今回は歌詞解説の前編として,歌唱パートのうち重要な部分を挙げて説明していきます。早速解説に移ります。

 

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最初に,解釈の前提となる重要な比喩表現を整理していきます。

1番のAメロに,
“何回も書いては消えていった言葉 真っ白な宇宙に尾を描いたほうき星”
サビに
“溢れた文字 夜空の一頁”
“世界を満たした言葉を全部 光を全部”
というフレーズがあります。

これらの表現から,夜空を本またはそのページに,星や光を文字や言葉に例えていることが分かります。この比喩表現は曲全体に関わってくるもので,後でまた出てきます。

 

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歌唱パートでもう一つ重要なのが,何かを書こうとしている描写が複数回出てくることです。

まず曲冒頭の
“三行と四文字の空を見上げてる”
というフレーズについてです。この表現は曲全体の中でも特に解釈が難しい部分だと思います。私もこれが何のことを言っているのか全く分かりませんでした。他の方の考察を読んでいても様々な捉え方がなされているようです。

ここで解釈の一例として挙げたいのが,なかざわ氏による「原稿用紙の書き出し説」です。これによると,三行と四文字というのは,原稿用紙のタイトル,名前,本文の1行目の三行のうち,名前に鷺沢文香とだけ書かれて止まっている状態を表現しているということです。なかざわ氏の考察記事はこちらです。

http://kamocho.hateblo.jp/entry/2018/10/09/000819
この説に従うと,文香さんはタイトルも本文も未着手の原稿用紙を見上げている状態,つまり今から文章を書こうとしているところだ,ということになります。

余談ですが,学会発表中に最も反応が良かった話がこの「三行と四文字」の解釈でした。これ私が考えたものじゃないんですけどね…。


話を戻して,Aメロの
“何回も書いては消えていった言葉”
というフレーズでは,よりダイレクトに「書く」という単語が出てきます。しかも書いては消えていっているということで,文章を作ろうともがいている様子が伝わってきます。

 

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ところで,鷺沢文香といえば読書家であり,ものを読むのではなく書いているイメージは湧きづらいかもしれません。しかし,実は彼女は書くことにもかなり意欲を見せていて,その様子はセリフなどから見受けられます。

例えば,デレステのブライトメモリーズ文香さんのセリフでは,「読むばかりだと思われていたでしょうか」と言って,日記を書いていることを打ち明けてくれています。

 

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さらに,デレステのルームでは,いつか自分の歌に作詞ができたら素敵だと言っています。しかもこのセリフは全カード共通のセリフで,どの文香さんをルームに入れてもこれを言ってきます。この「全カード共通」であることが重要で,作詞したいなあというのはその時の気分で思っているのではなく,常々そう思っているということになります。

以上のことから,何かを書くことは実は鷺沢文香のテーマのひとつになりうることが分かると思います。

 

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ということで,鷺沢文香は書き手になることへの意思があり,「銀河図書館」の歌唱パートではとにかく何かを書こうとしていることが分かりました。また,続く朗読パートでは,「少女がやがて恋を知るストーリー」が読まれるわけです。

ここで歌唱パートと朗読パートのつながりを考えた時,歌唱パートで書こうとしていた何かは,実は朗読パートの物語なのでは?というアイデアが浮かびました。

もしそうなら,朗読パートの物語は鷺沢文香作であり,その内容には文香さんの世界観が表れているはずです。今回の発表で,なぜ「銀河図書館」から鷺沢文香の世界観を見ようという内容にしたのかには,こういった経緯がありました。


ただし,これはちょっと都合のいい解釈でもあります。裏付けが十分ではありませんし,そもそもこの「少女がやがて恋を知るストーリー」が鷺沢文香作でなくても全体の解釈は問題なくできます。

この解釈は,いつか自分の歌に作詞ができたら素敵だという文香さんの望みを知っていて,それを叶えさせてあげたい文香Pたる私の願望の現れです。

まあ,こう解釈しても矛盾はたぶん出ないので,これくらいは好きに妄想させてください。

 

今回,歌唱パートで話したかった内容は以上になります。

 

次回の記事では,朗読パートの解説をしていきたいと思います。